3. 郷土文化の保存の提言


 郷土の中で歴史的に、文化的に継承されてきた遺産は、その地域だけのものです。西海町には、縄文時代と推定される遺跡に始まり、中世には南蛮との貿易港として栄えた史実や、キリスト教史にも記される天正遣欧使節、中浦ジュリアンの出生地ともされています。
 現在、町の文化財分布図に記載された史跡・遺跡・文化財などは約60件、さらに、委員会で調査の結果
による同等の未記載の史跡・遺跡・文化財などが約30件、合計90件余もあることが分かりました。
 町の面積が約70km2ですから、約1km2当たり1件以上の史跡・遺跡・文化財があるという、密度の高い分布であることが分かります。この密度の高さは、グリーン・ツーリズムで訪れた人々に楽しんでいただくには不足のない数であると考えられます。
 しかしながら、現状はその所在が分かりにくいものが多く、中にはほとんど痕跡のなくなっているものもあることがわかりました。史跡・遺跡・文化財は一度失えば、たとえ復元してもそれは本物ではありません。速やかに、本格的な現状の再確認を行い、価値判断を進め、保護の対策を取ることが大切です。


(1)既存・既知の史跡・遺跡・文化財
  1. 文化財分布図に記載された史跡・遺跡・文化財の現状を調査する。
  2. 史跡・遺跡・文化財の台帳を整備する。
  3. 調査結果に基づき、地域資源としての各々の価値を再評価する。
  4. 保護対策の緊急性からみた優先度を決める。
  5. 必要な保護処置策と実施計画を建て、予算措置を行い、保護対策を実施する。
  6. 優先度の高いものから、現地に案内板(由来説明書)を設置する。
  7. 文化財分布図の改訂版を作成する。
  8. グリーン・ツーリズムマップを作成し、地域資源として掲載する。
  9. 町内啓発用の資料を作成し、地域の意識と価値観の向上を図る。

史跡・遺跡・文化財の保護策と平行して、地元の人々に、祖先の遺産の価値を認識してもらう方策が必要です。委員の調査では、折角これだけのものがありながら、その存在も、ましてその由来も知らない 人が多いことが分かっています。これは、その人の関心が薄いこともあるでしょうが、一部の地域を除いて、価値を高めようとする努力が少なかったためでしょう。
祖先の遺産の保護は、地元住民の意識喚起をも意図して、実施することが望まれます。

(2)文化財分布図に未記載又は未発掘の史跡・遺跡・文化財

約30件の該当個所をあげることができます。未記載のものの中には、町内の多くの人が知っている。町内の神社やお寺などがあります。文化財としての価値評価の基準は、いろいろ考えられますが、この機会に改めて、これらを再評価する必要があると思います。例えば、虚空蔵山にある虚空蔵菩薩像は、歴史的にも古いものといわれていますが、その存在と由来を知る人は少ないのが現実です。
また、多くの神社やお寺は、ある程度、維持管理がなされていますので、それぞれの所在を地図上に記載し、現地には由来を記した案内板を設けることで、グリーン・ツーリズム の地域資源としての価値が、数段高まるでしょう。
さらに、町には歴史的には多くの記録はあるが、例えば、南蛮貿易が行われたことを裏付ける現物やキリシタン関連、あるいは、湯治の遺物が思いのほか残っていません。もっと、町中のどこかに埋もれている可能性もあります。これらの提供を広く町内外に呼びかけてみることも、地元住民の関心を高める方策の一つになるでしょう。
(1)項と重複する部分がありますが、次のことを提言します。

  1. 委員会の調査した約30件について、現状を再認識する。
  2. 町内外に未確認の史跡・遺跡・文化財・遺物の情報提供を呼びかける。
  3. 調査の結果及び町内外より寄せられた情報を、地域資源として再評価する。
  4. 価値ありと判断されるものを、史跡・遺跡・文化財台帳に収録する。
  5. 保護対策の緊急性からみた優先度を決める。
  6. 必要な保護処置策と実施計画をたて、予算措置を行い、保護対策を実施する。
  7. 優先度の高いものから、現地に案内板(由来説明書)を設置する。
  8. 文化財分布図に所在を追加掲載する。
  9. グリーン・ツーリズムマップを作成し、地域資源として掲載する。
  10. 町内啓発用の資源を作成し、地域の意識と価値観の向上を図る。

町の史跡・遺跡・文化財などは。この町だけのかけがえのない資源です。地元住民の関心が低ければ、それだけ資源の荒廃も早く進むでしょう。これらの資源はグリーン・ツーリズムでも、重要な位置付けにあると考えられます。

(3)自然資源

文化財分布図に掲載されている自然物は、七ツ釜鍾乳洞/石灰藻カルスト/椋の大木/シダ群落/カブトガニ繁殖地などがあります。このうち、七ツ釜鍾乳洞と石灰藻カルストは観光資源として、維持管理がなされています。他の植物やカブトガニ繁殖地には、特に保護措置はありません。大木はいわば歴史の語り部であり、失われれば、数百年の時間をなくすことになります。また、カブトガニ繁殖地は環境が汚染されれば、失うことになります。現状がどうなのか、依然、カブトガニが生息しているのか、今回は確認の機会がありませんでした。
町中には、まだ、数百年を経た種々の大木が随所に残っています。これらをも併せ、有効な保存策を取ることが望ましいと考えます。

(4)文化芸能

町の伝統芸能としては、浮立(ふりゅう)/鬼神太鼓/古謡/竜踊り/獅子舞などが挙げられます。獅子舞以外は、それぞれの保存会があり、諸々の祭事に公園されて、後継者の育成も行われているのは、心強いことです。
名人制度と連携して、一層の充実を図れば、グリーン・ツーリズムをより効果的に進めることができると考えます。



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